先に結論を言うと
阪神尼崎の駅前商業地はこの2年で+12.9%、住宅地は+5.2%でした。そして路線価図を読むと、この一帯の借地権割合は尼崎市内では高めの70%です。ただし同じ70%の中でも路線価は2倍以上の開きがあり、割合だけでは土地の強さは分かりません。
こんな方へ
- 阪神尼崎の駅前で土地や店舗をお持ちの方
- 土地を貸している方、借りている方
この記事で分かること
- 御園町の地価が32年でどう動いたか
- 借地権割合の意味や市内の分布
- 借地権割合70%の評価への影響
「駅前のビル、父から引き継ぐことになりそうで」
阪神尼崎の駅前でそういう財産をお持ちの方から、ご相談をいただくことがあります。
この数年、あのあたりの数字はけっこう動いています。ついでに気になって、路線価図を最初から最後まで読んでみました。
順番に見ていきます。
御園町の32年
阪神尼崎駅から120m、御園町に商業地の標準地(尼崎5-10)があります。1994年から32年分のデータがそろう地点です。
| 年 | 公示地価 | メモ |
|---|---|---|
| 1994年 | 1,090千円/㎡ | この期間の最高値 |
| 2000年 | 600千円/㎡ | — |
| 2005年 | 370千円/㎡ | この期間の最安値 |
| 2008年 | 427千円/㎡ | リーマン前の山 |
| 2015年 | 372千円/㎡ | — |
| 2026年 | 539千円/㎡ | — |
底からは+45.7%戻りました。ただし1994年比では49%、2000年比でもまだ△10.2%です。
このシリーズでほかの駅も調べてきましたが、どこも同じでした。1990年代の水準に戻った地点は、尼崎市内にひとつもありません。
動きが変わったのは、ここ数年です
御園町の前年比を並べると、変化がはっきりします。
| 年 | 前年比 |
|---|---|
| 2021年 | +1.0% |
| 2022年 | +1.4% |
| 2023年 | +2.6% |
| 2024年 | +5.6% |
| 2025年 | +8.8% |
| 2026年 | +8.9% |
5年で、ほぼ横ばいから年9%近くへ。
阪神尼崎が最寄りの商業地は、2024年から2026年の2年間で平均+12.9%でした。一方、住宅地3地点(東難波町3丁目、西本町北通5丁目、西本町1丁目)は+5.2%。市内の住宅地平均(+4.7%)と大きくは変わりません。
上がっているのは、駅前の商業地です。
背景として、2025年3月29日に駅北側の中央公園がリニューアルオープンしています。尼崎市と阪神電気鉄道、阪急阪神不動産による整備で、都市公園リノベーション協定制度を使った関西で初めての事例でした。面積は約1万5千㎡。
ただし地価の加速が始まったのは2024年で、オープンは2025年3月。順番が合わないので、公園だけで説明することはできません。
ここから、借地権割合の話です
さて、路線価図を読んだ話をします。
路線価図では、数字のうしろにアルファベットが付いています。「300D」なら1平方メートルあたり300,000円、借地権割合はD=60%という意味です。
記号と割合の対応はこうなっています。
| 記号 | A | B | C | D | E | F | G |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 借地権割合 | 90% | 80% | 70% | 60% | 50% | 40% | 30% |
全国では30%から90%まで7段階。90%にあたるのは銀座のような全国有数の一等地です。
なお、インターネット上にはこの対応表を「F=60%」と誤記しているサイトがいくつかあります。正しくはF=40%です。地価情報を扱う大きなサイトでも間違っていたので、念のため書いておきます。
尼崎市内は、ほぼ3段階でした
令和8年分の路線価図を、市内の主要駅について読みました。確認できた表示がこちらです。
| 場所 | 借地権割合 | 図面で確認した表示 |
|---|---|---|
| JR尼崎駅前(潮江1丁目) | 70%(C) | 780C、760C、730C、700C |
| 阪神尼崎駅前(御園町、昭和通、神田中通2丁目ほか) | 70%(C) | 500C、450C、430C、390C、380C |
| 阪急塚口駅前(南塚口町2丁目ほか) | 70%(C) | 630C、610C、590C、560C、520C |
| 阪急武庫之荘駅前 | 70%(C) | 470C、360C、340C、330C、310C |
| 阪急園田駅・北側 | 70%(C) | 330C、320C、285C、270C、260C |
| 各駅周辺の住宅地 | 60%(D) | 300D、265D、250D、160D、125D |
| 臨海部(東海岸町) | 50%(E) | 92E |
駅前商業地が70%、住宅地が60%、臨海部が50%。
全国では7段階ある中で、尼崎市内はこの3つにほぼ収まっています。80%や90%は、今回読んだ範囲では見当たりませんでした。
「駅前なら70%」とは限りません
ひとつ例外を見つけました。
阪急園田駅の南側です。駅のすぐ南に広がる一帯は、255D、245D、240D、235D、225D、220D、215D。駅前なのに60%です。
同じ園田駅でも、北側の商業道路は330C、320C、285Cで70%。線路をはさんで割合が変わっています。
同じことが阪神尼崎でも起きています。神田北通や神田中通は、駅寄りの1〜6丁目あたりが70%ですが、西へ進んで7〜9丁目になると155D、150D、145D、130D、125Dで60%に変わります。
「阪神尼崎の北側は70%」は、駅前と中心商業地についての話であって、町名の全域には当てはまりません。
路線価が公示地価の8割、という関係
読んでいて面白かったのがここです。
先ほどの御園町の標準地は、令和8年の公示地価が539,000円/㎡でした。
路線価は公示地価のおおむね80%を目安に定められています。539,000円の8割は431,200円。
そして図面の表示は「430C」でした。
教科書どおりの数字が、図面にそのまま出ています。ご自宅の前の路線価と、近くの公示地価を見比べてみると、同じことが確認できると思います。
同じ70%でも、土地の値段は2倍違います
ここが大事なところです。
阪神尼崎の一帯は広く70%ですが、路線価そのものは通りによってまったく違います。
- 中央公園の西側、南北の大通り沿い 500C、450C、440C
- 神田中通2丁目の中央商店街の通り 430C、420C
- 神田中通3丁目の同じ商店街の通り 390C
- 神田北通4〜5丁目付近の通り 205C、240C
- 昭和南通5〜6丁目付近の通り 180C、205C、210C
一番高い500Cと、180Cでは約2.8倍。借地権割合はどちらも70%です。
つまり、借地権割合が同じだからといって、商店街の集客力や店舗の採算性まで同じではありません。割合は借地権と底地の配分を決める数字であって、その通りの商業的な強さを表すものではないんですね。
なお、駅から離れるほど一直線に下がるわけでもありません。中央商店街では3丁目が390C、4丁目が380Cなのに対し、5丁目に400Cの区間があります。商店街の連続性や他の動線との接続が効いているのだろうと読めますが、これは図面からの解釈で、国税庁が理由を説明しているわけではありません。
記号の違いは、どこで効くのか
実務の勘所です。同じ「CかDか」でも、何を評価するかで影響がまるで違います。
| 評価するもの | C(70%) | D(60%) | 差 |
|---|---|---|---|
| 貸家建付地の減額率 | 21%減 | 18%減 | 3ポイント |
| 借地権そのもの | 70% | 60% | 10ポイント |
| 底地(貸宅地) | 30% | 40% | 評価額が1.33倍 |
貸家建付地では、ほとんど効きません。
自分の土地に建てた建物を貸している場合、評価額は「自用地としての評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で計算します。借家権割合は全国一律30%なので、CかDかで減額率は21%か18%。3ポイントの差です。
ここでは記号より賃貸割合のほうがずっと効きます。空室が多ければ、その分だけ減額が小さくなるからです。
底地では、決定的です。
人に貸している土地そのものの評価額は、借地権割合を差し引いた残りです。Cなら30%、Dなら40%。同じ路線価の土地でも、底地の評価額が1.33倍変わります。
底地や借地権を扱う案件では、記号の確認が最初の作業になります。
角地は、特に注意が要ります
70%と60%の境目では、CとDの路線が隣り合っている場所が実際にあります。神田中通の6丁目と7丁目のあたりが、まさにそうです。
角地でそれぞれの路線の記号が違うとき、どちらを使うか。ネット上には「高いほうの記号を使う」と書いているところもありますが、実務では正面路線の割合によるのが一般的な扱いです。
底地の評価では1.33倍の差になるところなので、ご自分で判断せず、確認したほうがいい場面です。
商店街には、用途の制限もあります
借地権割合とは別の話ですが、この一帯の不動産を考えるうえで押さえておきたい点です。
尼崎市は中央・三和商店街の一帯を特別用途地区に指定しており、商店街に面する敷地では、通りに面した1階部分を住戸などにすることが制限されています。物販や飲食の連続性を保つための仕組みです。
対象区域と商店街への接し方で適用が変わるので、繁華街全体に同じ規制がかかるわけではありません。売却や建て替えを考えるときは、区域に入っているかどうかの確認が要ります。
調べ方
国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で、誰でも無料で見られます。
年分を選び、都道府県、市区町村と進んで、町丁名索引から自分の町を探す。図番号をクリックすると図面が開きます。
数字のうしろのアルファベットを見てください。それが借地権割合です。路線価が付いていない倍率地域の場合は、評価倍率表の借地権割合の欄に直接パーセントで書かれています。
数字の出どころ
- 公示地価:国土交通省「地価公示」(不動産情報ライブラリ収録データ、1994〜2026年)
- 路線価図:国税庁財産評価基準書令和8年分、尼崎市(図番号58046、58049、58053、58093、58117、58118、58127、58153)
- 記号と割合の対応:国税庁路線価図の説明
- 中央公園リニューアル:尼崎市中央公園リニューアルオープンしました、阪神電気鉄道ニュースリリース
- 特別用途地区:尼崎市中央・三和商店街特別用途地区の概要
- 貸家建付地・貸宅地の評価:国税庁No.4614、No.4613
住宅地・商業地の2024年の数値は、2025年の価格と変動率から逆算した推計値です。また、路線価図は主要駅の周辺を中心に読んだもので、市内の全路線を確認したわけではありません。個別の土地については、必ずご自分の土地が接する道路の記号をご確認ください。
同じ尼崎で、駅ごとの地価と相続について書いた記事もあります。

JR尼崎・潮江の地価は、30年分の推移を調べています。

土地を貸している方、底地や借地権を相続する予定のある方。所在地が分かれば、借地権割合の確認と評価の概算はすぐにできます。
お気軽にご相談ください。まずはお話をうかがうところから始めます。


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