この記事でお伝えしたいこと
先に結論を言うと
亡くなった親の名義のままになっている不動産は、2027年3月31日までに相続登記をする必要があります。放っておくと、法務局からの催告を経て、10万円以下の過料の対象になりえます。
こんな方へ
親が亡くなったとき、実家の名義変更をしないままになっている方。お母さまの相続を考えはじめたら、お父さまの分も手つかずだったと気づいた方。
分かること
相続登記と住所変更登記、2つの義務化の期限とペナルティ。手続きが二段階になる理由と、無料で使える制度。
制度の話から読みたい方はこちらからどうぞ。
※ご本人が特定されないよう、いくつかのご相談をもとに内容を一部変えて書いています。
この秋、似たご相談が立て続けにありました。
母が亡くなったので、相続の手続きをお願いしたいんです。
お話をうかがって、固定資産税の明細や登記簿を確認していきます。すると、いまお住まいの家の名義が、お母さまではなく、10年ほど前に亡くなったお父さまのままになっていました。
「父のときは、特に何もしなかったんです」
一件だけなら、たまたまかな、と思うところです。でも何件か続いたので、書いておくことにしました。
「母の相続」のはずが、「父の相続」から始まる
お父さまが亡くなったとき、家に住み続けるのはお母さまですし、家族の誰も困りません。登記をしなくても、生活は何も変わらないんですよね。
ところが、お母さまが亡くなったときに、そのツケがまとめて回ってきます。
登記簿上の持ち主はお父さまです。ですから、まず「お父さまの遺産を誰が引き継いだのか」を決めなければなりません。その話し合いには、お母さまはもういらっしゃいません。お母さまの立場は、お子さんたちが引き継いで話し合うことになります。
実際の手続きは、次の順番です。
- お父さまの遺産分割協議書を、さかのぼって作る
- 続けて、お母さまの遺産分割協議書を作る
- それぞれの内容にもとづいて、登記の手続きをする
戸籍も、お父さまとお母さまの2人分を集めることになります。書類も打ち合わせも、単純に倍近くになります。
相続税の検討が必要になることもあります。お母さまの相続税を考えるとき、お父さまの遺産のうち「お母さまが引き継いだ分」がいくらだったかが前提になるからです。10年前の分け方をいま決めることが、今回の税額に影響するわけです。
期限は2027年3月31日。過料もありえます
ご相談の方からも聞かれました。
これからは、罰金を取られることもあるんですか?
答えは「ありえます」です。
2024年4月から、相続登記は義務になりました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記をしなければなりません。
そして大事なのが、2024年4月より前の相続も対象だということです。10年前に亡くなったお父さまの不動産も、登記していなければ2027年3月31日までに相続登記をする必要があります。つまり、あと半年ほどです。
正当な理由なく義務を果たさないと、10万円以下の過料の対象になります。
少しだけ補足すると、過料は刑罰の「罰金」とは違い、前科はつきません。また、いきなり科されるわけでもありません。法務局の登記官が義務違反を把握すると、まず登記をするよう催告があります。それでも対応せず、正当な理由も認められない場合に、裁判所へ通知され、過料を科すかどうかが判断される流れです。
とはいえ、催告を待つ理由はありません。期限が決まっている以上、早めに動くのがいちばん楽です。
引っ越しをしたら「住所変更登記」も義務になりました
もう一つ、2026年4月からは住所変更登記も義務になっています。
不動産の持ち主が引っ越したり、結婚で名字が変わったりしたら、変更の日から2年以内に登記簿の住所・氏名を変更しなければなりません。こちらも2026年4月より前の変更が対象で、2028年3月31日までに登記が必要です。怠ると5万円以下の過料の対象になります。
相続で実家を引き継いだあと、自分は別の場所に住み替える。そういう方は少なくありません。相続登記を済ませたあとも、住所が変われば登記が必要になる、ということは覚えておいてください。
ただ、こちらには便利な仕組みがあります。スマート変更登記といって、一度だけ法務局に生年月日などの情報を申し出ておけば、引っ越しのたびに法務局が住所変更の登記をしてくれます。費用はかかりません。
知っておくと助かる制度
手続きの負担を軽くする制度もいくつかあります。
| 制度 | 内容 | 費用・期限 |
|---|---|---|
| 相続人申告登記 | 遺産分割の話し合いがまとまらないときなどに、「自分が相続人です」と法務局に申し出る手続き。一人でもでき、相続登記の義務を果たしたことになります | 登録免許税はかかりません |
| 登録免許税の免税措置 | 相続で土地を取得した人が登記をしないまま亡くなった場合、その人の名義にする登記は免税。価額100万円以下の土地の相続登記も免税 | 2027年3月31日まで |
| 所有不動産記録証明制度 | 亡くなった方の名義の不動産を、全国分まとめて一覧にしてもらえる | 1通1,470円〜1,600円 |
相続人申告登記は便利ですが、あくまで「とりあえず義務を果たす」ための手続きです。遺産分割がまとまったら、その内容で改めて相続登記をする必要がありますし、売却するときにも相続登記は欠かせません。
免税措置は、今回のようにお父さまの土地をいったんお母さまが引き継いだ形で登記する場合に関係してきます。期限が相続登記と同じ2027年3月末なので、あわせて意識しておきたいところです。
ご相談を受けて感じたこと
10年前、何もしなかったご家族を責める気持ちはまったくありません。当時は登記をしなくても困らなかったし、それが普通でした。
ただ、ルールは変わりました。そして手続きは、時間がたつほど複雑になります。相続人が増えたり、書類が集めにくくなったりするからです。
「うちの実家、名義はどうなっていたかな」と思った方は、まず固定資産税の納税通知書を見てみてください。名義人の欄に亡くなった方のお名前があれば、それが確認のきっかけです。
登記の手続きそのものは司法書士の仕事ですが、僕のほうでは相続税がかかるかどうかの確認や、遺産の分け方のご相談をお受けしています。必要に応じて司法書士とも連携しますので、お気軽にご相談ください。まずはお話をうかがうところから始めます。
出典
- 法務省:相続登記の申請義務化について
- 法務省:相続登記の申請義務化に関するQ&A
- 法務省:相続人申告登記について
- 法務省:住所等変更登記の義務化について
- 法務省:スマート変更登記のご利用方法
- 法務省:所有不動産記録証明制度について
- 法務局:相続登記の登録免許税の免税措置について
相続の相談の前に何を用意すればいいか、書類の集め方をこちらにまとめています。

どこに土地があるのか分からない、というご相談の事例はこちらです。


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