この記事でお伝えしたいこと
先に結論を言うと
改正で法定後見は「必要なときに、必要な範囲だけ」使える制度になります。それでも、支援する人を家庭裁判所が選ぶ点は変わりません。任せる人を自分で決めたいなら、元気なうちの任意後見契約がいまも有力な選択肢です。
こんな方へ
成年後見の改正のニュースを見て、「待ったほうがいいのかな」と迷っている方。親の認知症に備えて、任意後見を考えはじめた方。
分かること
法定後見の何が変わり、何が変わらないのか。任意後見の見直し点。施行時期と、いま準備を始める意味。
改正の中身から読みたい方はこちらからどうぞ。
先月、両親と任意後見契約を結んだ話を書きました。
その記事の終わりで、2026年6月に成立した民法改正にも少しだけ触れています。書きながら、こう思う方もいるだろうなと感じていました。
法定後見が使いやすくなるなら、わざわざ任意後見を結ばなくてもいいのでは?
今回は、この問いに答えてみます。改正の中身を、法務省の資料で確認しながら整理しました。
法定後見はこう変わります
改正の柱は、「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれていた法定後見を、「補助」に一本化することです。そのうえで、本人にとって必要な範囲・期間だけ使えるようにします。
主な変更点をまとめると、次のとおりです。
| 項目 | いま | 改正後 |
|---|---|---|
| やめられるか | 判断能力が回復しない限り、原則として終われない | 利用の必要がなくなれば終われる |
| 支援の範囲 | 類型ごとに広く決まる | 本人に必要な行為を選んで支援する |
| 本人の意見 | — | 補助人を選ぶときの重要な考慮要素になる |
| 補助人の報酬 | — | 実際に行った事務の内容などを考慮して決めることが明確に |
| 亡くなった後 | できることが限られる | 火葬・埋葬の契約なども可能に |
いちばん大きいのは、やはり「終われる」ことです。
たとえば、相続人の一人が認知症で、遺産分割の話し合いができない。いまは後見を申し立てると、遺産分割が終わったあとも後見が続き、専門職への報酬を払い続けることになりがちでした。改正後は、目的が済めば終了できる道が開けます。
相続のご相談を受ける立場からすると、これは本当にありがたい改正です。
それでも変わらないこと
一方で、変わらない点もあります。誰が補助人になるかを決めるのは、家庭裁判所だということです。
改正後は本人の意見が重視されるようになりますが、最終的に選ぶのは裁判所です。前回の記事でも書きましたが、令和7年に選ばれた後見人等のうち、親族以外が約84%を占めています。
つまり、法定後見が使いやすくなっても、「この人に任せたい」を確実にする仕組みにはなりません。そこを自分で決められるのが、任意後見です。
任意後見も使いやすくなります
今回の改正には、任意後見の見直しも含まれています。前回「情報が出たら更新します」と書いた部分です。
- 任意後見監督人を置かなくてよい場合ができる:家庭裁判所が「監督人による監督は明らかに必要ない」と認めれば、監督人を選ばず、裁判所が直接監督できるようになります
- 法定の補助が始まっても、任意後見契約が終わらない:いまは法定後見を使い始めると任意後見契約は終了しますが、改正後は存続できます
- 任意後見人の「次」を決めておける:いまは任意後見人が亡くなった場合などに備えて、次の人に頼む仕組みがありません。改正後は、複数の契約について効力を発生させる順番を合意できるようになります
- 契約を発効させる申立てができる人が広がる:本人が公正証書で指定した人も、家庭裁判所への申立てができるようになります
個人的に注目しているのは、監督人の点です。任意後見を始めるには、いまは必ず任意後見監督人が選ばれ、その報酬が本人の財産から支払われます。この負担が、任意後見をためらう理由の一つになっていました。
もちろん、監督人を置かないかどうかは裁判所の判断です。それでも、家族が誠実に管理しているケースで負担が軽くなる可能性が出てきたのは、大きな前進だと思います。
「次の人」を決めておける点も、親子で契約する家庭には心強いはずです。子どもが一人で引き受けるのは不安、という声はよく聞きますから。
施行はいつ? 待つべき?
成年後見・任意後見の見直しは、公布(2026年6月24日)から2年6か月以内に政令で定める日に施行されます。遅くとも2028年12月までに、ということです。
では、施行まで待ったほうがいいのでしょうか。
僕の答えは「待たなくていい」です。理由はシンプルで、任意後見は判断能力があるうちにしか結べないからです。2年後に元気でいられるかは、誰にも分かりません。
いま結んだ契約も、改正後の仕組みの中で生きてきます。いまの制度で法定後見を使っている方も、改正後は制度を続けるか、新しい制度に移るか、終了するかを選べるとされています。制度が変わるから待つ、ではなく、制度が変わっても使える備えを先にしておく。そう考えるのがいいと思います。
僕が両親と結んだ契約も、改正に合わせて見直す点があれば、施行に向けた詳しい情報を見ながら検討するつもりです。
まとめ
- 法定後見は「補助」に一本化され、必要な範囲・期間だけ使える制度になる
- それでも、支援する人を選ぶのは家庭裁判所
- 任意後見も、監督人の扱いや「次の人」の指定などで使いやすくなる
- 施行は遅くとも2028年12月まで。任意後見は元気なうちにしか結べないので、待つ理由はない
任意後見は、遺言や相続税の試算とあわせて考えると、全体の見通しが立てやすくなります。お気軽にご相談ください。まずはお話をうかがうところから始めます。
出典
任意後見の仕組みと、僕が両親と契約を結んだときの体験はこちらに書いています。

親が亡くなったあと、手続きを先送りにするとどうなるか。相続登記の義務化の話はこちらです。


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