先に結論を言うと
この2年で一番上がったのは、駅前の商業地でも住宅地でもなく工業地でした。住宅地が+4.7%なのに対して、工業地は+27.1%。市の平均値だけを見ていると、この差は見えません。ご自分の土地がどう動いたかは、場所と用途で確かめる必要があります。
こんな方へ
- 尼崎市内に自宅や事業用の土地をお持ちの方
- 工場や倉庫を持つ法人の経営者・後継者の方
- 相続税がかかるかどうか気になっている方
この記事で分かること
- 尼崎市内58地点の2年間の変動率を、用途別に比べた結果
- 上昇率の上位に並んだ地点と、ほとんど動かなかった地点
- 税理士として気になった3つのポイント
「尼崎も地価が上がってるらしいですね。うちも相続税、心配したほうがいいですか」
最近、この質問をよく受けます。
答えは「土地の場所と用途によって、まったく違います」です。
ふわっとした答えで申し訳ないので、実際に数字を並べてみました。
尼崎市内58地点を2年分並べ直しました
国土交通省が毎年3月に発表する公示地価。
2026年の尼崎市には70地点以上の標準地があります。
今回はこのうち、別の記事で調べている阪急塚口・JR塚口・出屋敷が最寄りの地点と、2026年に新しく選ばれて前年と比較できない地点を除いた58地点について、2024年・2025年・2026年の3時点を突き合わせました。
結果がこれです。
| 用途 | 地点数 | 2025年 | 2026年 | 2年累計 |
|---|---|---|---|---|
| 住宅地 | 41 | +2.11% | +2.55% | +4.7% |
| 商業地 | 11 | +4.50% | +5.72% | +10.5% |
| 工業地 | 6 | +13.17% | +12.20% | +27.1% |
工業地が住宅地の5倍以上のペースで上がっています。
尼崎市全体で「地価が上がっている」と聞くと、住宅地も駅前も同じように上がっているように感じます。
でも、平均を見ているだけでは、この中身は見えてきません。
上位5地点が全部、工業地でした
2年間の上昇率上位を並べます。単位は円/㎡です。
| 所在 | 用途 | 2024年 → 2026年 | 2年 |
|---|---|---|---|
| 大浜町2丁目 | 工業 | 13.4万 → 18.0万 | +34.3% |
| 北初島町 | 工業 | 14.0万 → 18.3万 | +30.7% |
| 西長洲町3丁目 | 工業 | 14.0万 → 18.0万 | +28.6% |
| 久々知3丁目 | 工業 | 13.0万 → 16.6万 | +27.6% |
| 西長洲町1丁目 | 工業 | 17.0万 → 21.4万 | +25.8% |
| 潮江1丁目 | 商業 | 78.0万 → 94.0万 | +20.5% |
| 御園町 | 商業 | 45.5万 → 53.9万 | +18.5% |
| 若王寺3丁目 | 工業 | 16.5万 → 19.0万 | +15.2% |
上位5地点がすべて工業地でした。
JR尼崎駅前の潮江1丁目が+20.5%なので、これも十分大きな上昇です。
ところが、それをさらに上回っている土地がいくつもあります。
しかも駅前でも住宅街でもありません。
工場や倉庫が並んでいる土地です。
なぜ、尼崎の工業地がこんなに上がっているのか
これは僕の推測だけではありません。
尼崎市自身が、固定資産税についての説明のなかで、工業地では物流施設用地としての需要から急激な地価上昇が起こっていると説明しています。
国土交通省の鑑定評価書を読んでも、同じ傾向が繰り返し出てきます。
たとえば大浜町2丁目の標準地は、約3,000㎡の工業専用地域にある土地です。
2026年の鑑定評価書では、尼崎東海岸インターチェンジに近く、大阪・神戸などの消費地へのアクセスが良いため、物流施設用地の需要が旺盛だとされています。
2024年の13万4,000円/㎡から、2026年には18万円/㎡。
わずか2年で+34%です。
尼崎は大阪と神戸の間にあり、名神高速、阪神高速神戸線、湾岸線が使えます。
住宅地として考えると「駅から何分」が重要ですが、物流施設にとって重要なのは、高速道路に乗りやすいか、大きな消費地に荷物を運びやすいかです。
土地を見る物差しが、住宅とはそもそも違うんですね。
しかも、上がっているのは臨海部だけではありません
ここも数字を見ていて面白かったところです。
「物流施設が増えている」と聞くと、湾岸部の大きな倉庫を思い浮かべます。
実際、大浜町はその典型です。
ところが、上昇率上位には西長洲町や久々知も入っています。
久々知3丁目はJR尼崎駅から約1.3kmの内陸型工業地域です。
国土交通省の鑑定評価書でも、中規模工場が多い工業地域とされながら、物流業や製造業による需要が強く、供給が限られることから工業地の地価上昇が続いているとされています。
つまり今の尼崎では、
「臨海部の巨大物流施設だけが上がっている」のではなく、工場や倉庫として使える事業用地そのものに強い需要がある
と考えたほうが実態に近そうです。
工業地が多い尼崎でも、企業が欲しがる立地の土地は無限にあるわけではありません。
需要が強い一方で、売り物は限られている。
これが、住宅地とはまったく違う値動きを生んでいます。
一方、ほとんど動いていない住宅地もあります
変動の小さかった地点です。
- 杭瀬南新町1丁目 2年で+0.5%
- 武庫の里2丁目 +1.5%
- 大庄西町1丁目 +1.8%
- 杭瀬寺島1丁目 +1.9%
2年でほぼ横ばいに近い地点もあります。
ここは誤解のないように書いておきたいのですが、地価があまり上がらないことは、そこに住み続ける人にとって必ずしも悪い話ではありません。
家は株ではありません。
毎日そこで暮らしている人にとっては、土地の値段が何%上がったかより、買い物が便利か、通勤しやすいか、住み慣れているかのほうが大事でしょう。
地価は、その街の暮らしやすさをそのまま点数にしたものではありません。
一方、相続税や固定資産税を考えるときには、地価の動きは無視できません。
ただし、公示地価、相続税の路線価、固定資産税評価額はそれぞれ別の制度です。
公示地価が2年間ほぼ横ばいだからといって、税金の評価額が必ず同じ動きをするわけではありません。
それでも、「尼崎は地価が上がっている」という市全体の数字だけを見て心配する必要がない地域がある、ということは言えそうです。
住宅地は、武庫之荘が一番上がっているわけでもありません
住宅地だけを最寄り駅ごとにまとめると、こうなりました。
| 最寄駅 | 地点数 | 2026年平均水準 | 2年累計 |
|---|---|---|---|
| 立花 | 6 | 18.6万円/㎡ | +5.4% |
| 園田 | 6 | 20.7万円/㎡ | +5.4% |
| JR尼崎 | 4 | 18.1万円/㎡ | +5.4% |
| 阪神尼崎 | 3 | 18.7万円/㎡ | +5.2% |
| 武庫之荘 | 10 | 23.6万円/㎡ | +4.8% |
| 武庫川 | 3 | 16.9万円/㎡ | +2.7% |
| 杭瀬 | 2 | 17.6万円/㎡ | +1.2% |
面白いのは武庫之荘です。
今回集計した駅別では価格水準が一番高いのに、伸び率は平均的です。
立花、園田、JR尼崎の住宅地のほうが、この2年間の伸び率では少し上でした。
住宅地では「もともと高いところが、さらに一番上がる」という単純な動きにはなっていません。
国土交通省の鑑定評価書を読んでいると、尼崎市の住宅地について、住宅需要は堅調とする一方で、建築費の上昇によって土地価格が圧迫される地域もあるという記述が出てきます。
これは考えてみれば当然です。
土地が500万円高くなって、さらに建物も500万円高くなれば、家を買う人の予算が追いつきません。
住宅は土地だけでは買えませんから、建築費の上昇が大きい局面では、土地価格だけが際限なく上がることは難しくなります。
武庫之荘の伸び率が他より低い理由をこれだけで説明することはできませんが、すでに価格水準の高い住宅地ほど、購入者の総予算の影響を受けやすいという見方はできそうです。
税理士として気になった3点
1つめ。工場や倉庫の土地を持っている会社
今回、僕が一番気になったのはここです。
2年間で地価が25%、30%と上昇している工業地があります。
会社がこうした土地を持っている場合、事業には何も変化がなくても、非上場株式の評価額が上がることがあります。
小会社などで使われる純資産価額方式では、会社の資産を原則として相続税評価額に洗い替えて株価を計算します。
ですから、会社が昔から所有している工場用地の評価額が上がれば、会社の利益が増えていなくても株価に影響します。
「3年前に事業承継対策で一度株価を計算したから大丈夫」
とは限りません。
特に、尼崎市内に工場・倉庫・事業所の土地を多く持つ会社は、一度計算し直してみたほうがいいと思います。
なお、取得後3年以内の土地などは純資産価額計算上の取扱いが異なりますので、実際の株価計算では個別に確認が必要です。
2つめ。住宅地の相続は、市全体の上昇率で心配しない
「尼崎の地価が上がっているそうですね」
という話と、
「自分の家の相続税評価額が大きく上がった」
という話は別です。
杭瀬や武庫川周辺など、今回の集計では2年間の上昇がかなり小さい住宅地もありました。
相続税を考えるなら、「尼崎市+何%」を見るのではなく、自宅前の路線価が実際にどう動いたかを見る必要があります。
土地の形、間口、奥行、道路との関係によっても相続税評価額は変わります。
不安を煽られて対策を始める前に、自分の土地の数字を一度出してみる。
それで十分なケースも多いと思っています。
3つめ。「地価が上がった」という言葉の意味を分ける
今回58地点を並べてみて、一番感じたのはこれでした。
住宅地 2年で約+5%
商業地 約+10%
工業地 約+27%
同じ尼崎市で、これだけ違います。
さらに住宅地の中でも、杭瀬と立花では動きが違う。
工業地の中でも、大浜町と他の地点では違う。
「尼崎の地価が上がった」という一つの言葉の中に、まったく違う市場がいくつも入っています。
市の平均値だけで、自分の土地の話をするのはやめたほうがいい。
58地点を並べてみた僕の結論は、これです。
数字の作り方について
最後に、数字の作り方も正直に書いておきます。
2024年の数値は、一部について「2025年の価格÷(1+2025年の変動率)」で逆算した推計値を使っています。
公表値の丸め方の関係で、特に価格の低い地点では若干の誤差が生じる可能性があります。
一方、2026年について計算した前年比は、公表されている変動率と小数第1位まで一致することを全地点で確認しました。
したがって、個々の地点の小数点以下まで厳密に比較するためというより、尼崎市内で「どの用途・どの地域が動いているのか」を見るための集計としてご覧ください。
主な出典
- 国土交通省「令和8年地価公示」
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ・鑑定評価書」
- 尼崎市「固定資産税・都市計画税に関するよくある質問」
- 尼崎市の都市計画・企業立地関連資料
ご自宅や事業用の土地が、実際にどのくらい評価額が動いているのか。
場所と面積が分かれば、現在の路線価を使って概算することができます。
工場や事業用地を会社で所有されている場合は、非上場株式の評価への影響も確認できます。
お気軽にご相談ください。まずはお話をうかがうところから始めます。
潮江は31年分のデータを調べました。

立花でも同じように相続税の試算をしています。


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