佐藤一磨氏の『残酷すぎる幸せとお金の経済学』を読みました。私たちの漠然とした「幸せ」に対する疑問に、経済学の視点から鋭く切り込みます。本書では、結婚、出産、仕事、老後など、人生の様々な局面における幸福度を、データに基づいて徹底的に分析しています。
ワタシなりに、一言でまとめると、「幸福度が下がりそうなときに、オカネは防ぐことができる」ということかなと思いました。
佐藤一磨『残酷すぎる幸せとお金の経済学』要約
序章:「幸せ」の測り方
幸せの測定にはアンケート調査が用いられ、「全体として、最近の生活はどのような感じですか?」といった主観的な質問が使われる。このシンプルな方法ながら、世界中で多くのデータが蓄積され、経済学的な分析が可能になっている。
第1章:幸せはお金で買えるのか
長年の研究では、年収が約1000万円を超えると幸福度が頭打ちになるとされていた。しかし、2023年の研究では、年収が増え続けるほど幸福度も上昇し続けることが判明。ただし、国単位で見ると、経済成長が必ずしも幸福度向上に結びつかない。また、経済成長が子供の幸福度を低下させる可能性も指摘されている。
第2章:出世すると幸せになれるのか
日本では管理職への昇進が必ずしも幸福度向上につながらない。特に男性は、妻が専業主婦である場合に幸福度が高くなる傾向がある。女性の社会進出が進む一方で、男性の仕事満足度が低下している点も興味深い。
第3章:結婚したら幸せになれるのか
結婚は男女ともに幸福度を高めるが、特に独身男性の幸福度は低い。夫婦関係の満足度は、学歴差や年齢差、義両親との同居によって影響を受ける。また、夫婦仲が悪い場合、未婚や離婚よりも幸福度が低くなる。
第4章:「子どものいる女性ほど幸福度が低い」のはなぜか
日本では子供を持つ女性の幸福度が低くなる傾向がある。子供が増えるほど、また思春期になるほどその傾向が強まる。金銭的負担、夫婦関係の悪化、家事・育児の負担が主な要因と考えられ、日本では第1子出産直後に夫婦関係が急速に悪化する傾向も見られる。
第5章:離婚したら不幸せになるのか
離婚直後は女性の幸福度が低下するものの、男性より回復が早い。夫婦間の幸福度格差が大きい場合、特に妻の幸福度が低いと離婚につながりやすい。また、経済的に不安定な家庭ほど離婚率が高い傾向がある。
第6章:「家族ガチャ」で人生は変わるのか
長女の家族構成(弟の有無)によって価値観やキャリアに影響が出ることが示唆されている。また、日本では長男の方が高学歴・高収入になりやすい傾向がある。こうした家族構造の影響は無意識に個人の人生を左右している可能性がある。
第7章:なぜ日本の男性は幸福度が低いのか
日本では2000年代以降、男性の幸福度が低下している。特に50歳以上の未婚男性や子持ち男性の幸福度が低い。未婚率の上昇や共働きの増加により、今後さらに男性の幸福度が低下する可能性がある。
第8章:「幸せのどん底」は何歳でやって来るのか
幸福度は年齢とともにU字型を描き、最も低くなるのは48.3歳とされる。中年期の幸福度低下は、理想と現実のギャップ、親の介護と子育ての二重負担が影響している。50代の幸福度低下はお金で対処できるとも言われているが、社会的なサポートも重要だろう。
終章:経済学が導き出す「幸せの条件」とは
本書を通じて、幸せとお金の関係、結婚や家族の影響、年齢による幸福度の変化が明らかにされた。単純に「お金があれば幸せ」というわけではなく、環境や人間関係が重要な要素であることが示されている。今後の人生設計において、これらの知見を活かしていくことが大切だろう。
この本の内容を読んで、自分の幸福度にどのような要因が影響しているかを考えてみるのも面白い。あなたの人生にとって「幸せの条件」とは何だろうか?
コメント