税理士の仕事をしていると、〇〇の費用って経費になりますか? と聞かれることがあります。
同じような支出であっても、人によって違うので判断に迷うときもあります。
必要経費になるかどうか判断するための、基本的な考え方を整理しました。
なお、税務調査の一般的な流れや対応方法については、こちらに書きましたので、あわせて参照ください。
【目的】支出の目的で判断、事業に直接必要かどうか
その「支出」がなければ、売上は立ちませんか?
「売上」をあげるために、直接に必要な「支出」が必要経費です。
つまり、その支出がなければ売上がなくなるかどうかです。
例えばモノを仕入れて売る仕事の場合「仕入れ」がなければ「売上」は立ちませんから、「仕入れ」の支出は明らかに必要経費です。売るために借りた店の家賃や電気代なども必要経費です。
それから、経理などのための事務費や、ときには必要となる同業者団体などの飲食費も必要経費になるでしょう。
【参考情報】
国税庁のウェブサイトに「やさしい必要経費の知識」というページがあります。
僕が読んでも「やさしい」とは思いませんが・・・コチラです。
生活費になるものは、必要経費になりません
売上に少しでも関連している支出が、すべて必要経費になるわけではありません。
特に個人の場合は生活費との切り分けが重要です。
例えば、仕事に行くためにスーツを着て行くからといって、スーツ代を必要経費にすることはできません。
なぜなら、仕事以外の生活の場面でもスーツを着ることがあるからです。
あるいは、よく間違えられますが、仕事中の食事代も費用にはなりません。なぜなら、仕事をしていなくても食事はするからです。
ただし、同じ服であっても、会社の名前が入った作業服であれば必要経費になる場合があります。また従業員に支給する食事の場合は扱いが異なります。
直接関係があるといえるかどうかは過去の判例などから判断します。
明確に区分できる場合は、一部を計上することもできる
また、事業用の費用と、生活費とが混在する場合も注意が必要です。
例えば、自宅を倉庫としネットショップで商品を売る場合を考えてみましょう。
この場合、例えば自宅の一部(たとえば床面積の1/4)を倉庫として使っているならば、その部分については必要経費として計上することができます。
仮に、家賃8万円で借りている部屋ならば、1/4の2万円を計上するといった具合です。
ただし、明確に区分できることが要件となっていることに注意です。
【形式】領収書があればいいわけではなく、なくてもいいものもある
さて、支出が必要経費になるかどうかを判断するには支出の目的が大事で、さらに事業用と生活費を区分することも必要と説明しました。
領収書とレシート、どちらが良いか
それぞれの支出について内容や金額を客観的に証明するものが、領収書などの資料ということになります。
領収書の方がレシートより証明力が高いかといえば、かならずしもそうとは限りません。
例えば、スーパーやコンビニでなにか物品を購入した場合は、レシートには購入したものが一点づつ記載されます。これを手書きの領収書にしてもらった場合には買ったものについて「食料品等」といった表記になってしまい、かえってわかりにくくなります(購入した人についての情報は加わりますが・・・)。
場合によっては、わざわざ手書き領収書にしてもらうことで、事業用と関係のない生活用品も一緒にしたのではないかと疑われてしまいます。
もしも、事業用のモノと一緒に生活関連品を買ったのであれば、レシートの一部に印をつけるなどして、事業用のみを経費に計上すれば大丈夫です。
【参考情報】領収書についての法規規定について
実は所得税法や法人税法には領収書について規定はありません。
消費税法には領収書に記載すべき事項の規定があります
ですが、所得税や法人税で費用と認められる支出については、消費税についても認められる傾向があります。
飲食店の領収書には参加者名をメモしておく
飲食店で接待した場合には、誰が参加したかという情報が大切です。
接待交際費として必要経費に認められるには、事業関係者との飲食であることが必要なためです。
飲食店が発行する領収書には、支払った人の名称は記載してもらえますが、
受取ったときに、一緒に飲食した人の名前をメモしておくことをオススメします。
なぜなら、数年してからの税務調査で「誰と行きましたか?」と聞かれても、覚えていないことが多いからです(苦笑)
もらった段階でメモしておくことで、こうした事態は防げますし、メモ付きの領収書を調査官が見れば、きっちりしているなという印象を与えられます。
領収書がもらえない場合にも記録を残す
電車賃やバス賃のように領収書のないものでも、事業用に使ったことを説明できれば経費に計上できます。
この場合の支出については「出金伝票」を用意したり、帳簿に書いておくといった方法で記録を残すようにしてください。
そこに、行先や目的をメモしておき、事業用であることを説明できるようにしましょう。
何を証明する資料なのかを考える
まとめると、領収書があるから費用になるというわけではありません。
事業のために支出したものであることを証明できる資料となるように心がけましょう。
【調査】税務署は何をどのように調べていくのか
形式、目的についてチェックします
上でも書いた通り、家事費用が混ざっていないか、事業の必要経費といえないものが混ざっていないか、といったことは、重点的にチェックされます。
金額についてもチェックします
例えば、事業関係者との接待交際費は必要経費ですが、それにしても、売上に比して大きすぎるに支出は、事業性を疑われることになります。どういうことかといえば、好きで飲み歩いているだけで、事業場の接待というよりは、生活(娯楽)の費用なのではないかと指摘をうけるかもしれません。
税務署は同業他社のデータもあるので、こうしたところと比較して異常な値がないかもチェックされます。
ときには「反面調査」も行います
税務署が確認が必要とかんがえた場合には、取引先等の調査をすることがあります。
例えば、A社の帳面にB社から10万円の仕入れがあるなら、B社の帳面にはA社向けの10万円の売り上げがあるはずです。A社の申告が正しいかどうかを確認するために、取引先B社の帳面も調査をするというわけです。もし、B社帳面の金額が少なかったり、なかったりする場合にはA社がごまかしている可能性があるというわけです。
また、銀行預金の入出金明細についても、税務署は調査をかけています。
税務署の調査官は調査のプロですから・・・
どのような仕事にもプロと素人の差ってありますよね。
あたりまえですが、調査官は調査のプロです。。。
税金をごまかそうとする人の手法は、だいたい似ていますので、そういう項目は重点的に調査されると思ってください。
そして、人間ですから態度や雰囲気でなんとなくピンとくるのだそうです。
ごまかそうとして、ごまかせるものではないと、心得ておきましょう(笑)
まとめ
必要経費としてみとめられるかどうかは、事業の売上に直接関係する支出であるかどうかです。
そのため、同じものを同じように買ったとしても、必要経費になるかどうかはその人の事業の内容により異なります。
領収証などの資料については、事業用の必要経費であることを証明するためのものと考えておきましょう。
税務調査の場面では、経営者として自信をもって説明できるようにしておいてください。
これくらいばれないだろうというのは、百戦錬磨の調査官を相手に通じませんのでそのつもりで!
最後に、それでも一人で判断するのに迷った場合には、税理士にご相談を!
連絡をお待ちしております^^
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