「あおり運転」や「老人の暴走事故」で現代は交通戦争・・・ってのはウソです

統計より

数字で見るとずいぶん印象が異なることも

最近「あおり運転」というコトバをよく耳にします。
警視庁は2020年6月から「妨害運転罪」を創設しました。
また、ブレーキとアクセルの踏み間違いでの悲惨な事故もよく聞きますよね。
では、交通事故はどれだけ増えているのでしょうか。

簡単に確認できます、例えば「交通事故 死亡者数」などググってください。
すると、2020年の交通事故死亡者数は統計開始以来最小で、初めて3000人を下回るといった記事が出てきます。
かつて、昭和40年代には年間2万人近い人が交通事故で死亡し、負傷者は100万人に迫り、「交通戦争」とも言われていました。
交通事故が起きやすい場所に歩道橋やガードレールを設置したり、車の安全装備を充実させて、ここまで減りました。

もちろん、今でも交通事故で亡くなる方はいらっしゃいます。
そして、一人ひとりに家族や友人がいるのですから、3000人を下回ったからもういいというわけではありません。
ただ、これだけ「改善」してきたことはあまり報道されないのです。
(グラフは政府統計の総合窓口e-Statより)

報道だって悪気があるわけでは・・・

死亡者数は40年かけて約1/5まで減ったわけですが、こういったニュースはあまり目にしません。
どちらかというと、マスコミで報道されるのは悲惨な交通事故ばかりです。
理由は二つあると思います。

理由1:減ったとはいえゼロではない交通事故に警鐘を鳴らす役割。
理由2:40年間で1/5になりましたという報道はニュース価値が低い。言い換えると視聴率がとれない。
社会の改善を伝えるニュースに興味を持つ人が少ないというのは、なにやら悲しいニュースですが、、、そんなわけで、僕は「マスコミの報道姿勢が悪い」とばかりは言えないかなと思います。

数字を見るときの二つ視点

「昨年、交通事故で3千人近くの尊い命が失われました」
このように表現した場合に受ける印象はかわります。
数字を見るときに僕は二つのことに注意しています。

視点1:3000という数字を分解して、一つ一つの意味を考える。
一人の人が突然亡くなった時に、その周りの人たちはどうなるのだろうか
逆に加害者側の人生はどのようになるのだろうか。何が原因だったのか、(一つとは限りませんが)、どうすれば防ぐことができたのか。

視点2:他の数字と比較して意味を考える。
昨年と比べてどうだったのか。それ以前とはどう違うのか。
人口10万人あたりの発生率にするとどうなのか。
人口が減ったから死者が減ったのでは、交通環境は改善していないということになります。
他の国はどうか、他の死因はどうなのかなどなど。

現在、新型コロナに関する数字が毎日報道されていますが、煽り立てるような報道姿勢に一喜一憂して、つかれていませんか?

なやまないために、調べてみよう

「交通事故にあわないために、家から一歩も出ません」
それでは、なんのために生きているのかわかりませんよね。
生きていくと、意識してもしなくてもリスクとつきあっています。
いま、あなたの頭を悩ましているその問題は、どの程度リスクがあるのか。
あらためて、他の問題と比較してみると、少し楽に呼吸ができるようになるかもしれません。

参考文献

ハンス・ロズリング『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

友人に勧められて読んだこの本。「目からうろこ」体験でした。
世界は良くなっているのに、ほとんどの人は(とても偉い人も含めてw)それに気づいてないだけなんだと知ることは、日常生活を幸せに生きていくことにもつながります。良本、おすすめデス。

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